パーキンソン病2024.03.25
ここ数日は気持ちのよい天気に恵まれ、クリニックの窓からも手稲山の電波塔がくっきり見えるようになりました。いよいよ春が近づいてきています。
パーキンソン病患者さんで減少する脳内ドーパミン。健康な方でも、年齢を重ねるにつれてドーパミン神経は減少していくものですが、パーキンソン病患者さんではその減少の度合いが強くなってしまうために、パーキンソン症状が出てしまうと考えられています。
パーキンソン病の診断に大切な検査のひとつである「ドーパミントランスポーターシンチグラフィ(DATスキャン)」。DATスキャンでは具体的な数値(SBR;Specific Binding ratio)でドーパミン神経が測定され、低下している場合には正常範囲と比較してどれくらい低下しているかが分かります。ある意味、「ドーパミン年齢」がわかる検査で、たとえば50歳で来院されたパーキンソン病患者さんのドーパミン神経の数値が、健康な方でいうところの90歳くらいのドーパミン神経ということもあります。
実はこのDATスキャンは、原則としてパーキンソン病診断のときに、「一度に限り」測定できると保険診療で定められています。パーキンソン病患者さんからは、治療を開始して2年や5年経ったときに、もう一度DATスキャンを撮影してドーパミン神経の数値を測ってほしい、との相談を受けますが、残念ながら保険診療で2回目のDATスキャンをすることができません。
現在パーキンソン病で行われている治療は、不足しているドーパミンをあくまでも薬剤で補充するものですので、繰り返し行うDATスキャンでドーパミン神経の数値が改善することは考えにくいとされています。それでも、ドーパミン神経の減少具合には個人差がありますので、なるべくドーパミン神経が減少することなく、長い期間維持できることが望ましいことは言うまでもありません。
将来的にiPS細胞などを利用した神経再生医療が実用されるようになると、パーキンソン病と診断された早い段階でこの再生治療を行うことによって、ドーパミン神経が再生・回復し、パーキンソン病が改善することが期待されています。もし繰り返しDATスキャンを撮影していったら、ドーパミン神経の数値も改善していくようになるかもしれません。
2018年より京都大学で行われていた「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」が、2023年末に経過観察期間を終了しました。世界中でたくさんの方が、この結果に注目していることと思います。
~朝焼けの穂高連峰と槍ヶ岳
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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