Dr Makoto’s BLOG

ふるえの治療は

パーキンソン病2024.08.11

日本人選手が大活躍したパリ・オリンピックが閉幕しました。診察室で話をしていると、オリンピックをテレビ応援しているという患者さんがたくさんおられました。みなさん少々寝不足のようでしたが(笑)、ちょっと興奮した様子で、なんとも嬉しそうな表情が印象的でした。
 
多くのパーキンソン病患者さんにみられる振戦(ふるえ)。この「ふるえ」の治療について患者さんからよくご相談をいただきます。

基本はパーキンソン病治療の主体である、ドーパミンを増やすレボドパやドパミンアゴニストといった薬剤を使用していきます。一定量のレボドパやドパミンアゴニストによってふるえは軽減していきますが、なかにはあまり効果を実感できない患者さんもおられます。このようなときに、レボドパやドパミンアゴニストをさらに増やすという方法もありますが、とくにレボドパは将来的な薬効減少(ウェアリング・オフ現象)の心配もあるため、すごく悩ましいところです。
 
ふるえに対して、そのほかの薬剤はどうでしょうか?昔からふるえの特効薬として使用されている抗コリン薬(トリキシフェニジル)は、立ち上がりもはやく、ふるえへ効果的な薬剤です。ひとつ気を付けたい点は、抗コリン薬を長期間使用することによる認知機能への影響です。抗コリン薬は40代や50代の比較的若いパーキンソン病患者さんへ使用することがありますが、もう少し上世代の患者さんには投与を慎重に検討していきます。
ゾニサミドやMAO-B阻害薬もふるえに一定の効果があると言われていて、これらの薬剤は認知機能への影響が少ないことも安心材料です。抗てんかん薬のクロナゼパムや本態性振戦で用いられるアロチノロールをパーキンソン病のふるえ治療へ使用することもあります。
 
最近は、これらの薬剤治療に加えて、FUS(集束超音波治療)と言われる治療ができるようになりました。MRI画像を用いて脳深部にある振戦の神経活動が異常な部分に、超音波のエネルギーを集中させて照射し、熱凝固することで、ふるえを軽減させる治療方法です。(FUSの効果には個人差があります)
 
10年以上ふるえで困っておられたパーキンソン病患者さん。彼がクリニックへ来られてからも、レボドパや抗コリン薬、ゾニサミドなど、あらゆる薬剤で治療をしてきましたが、手のふるえはずっと続いていました。この春にFUS治療を専門病院へお願いし、先日クリニックにいらしたときのことです。ながく続いていた手のふるえが綺麗におさまっていました。彼のスッキリした表情をはじめて見ることができて、ついつい私も嬉しくなりました。
 

~沼ノ原・大沼からみるトムラウシ山

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩