Dr Makoto’s BLOG

ちょっと口に出してみると

パーキンソン病2025.01.13

 
冬の季節になると、ついつい心配してしまうことが…。「いつ寒波・大雪が来るのだろう?」と、ちょっとビクビクしながら過ごす毎日です。空知・道北地方を中心に大雪となっていますが、札幌は驚くほど雪が少なく、密かに胸を撫で下ろしています…油断禁物、「今のところは」と思っておくことにしましょう。年明けのこの時期でこれだけ雪が少ないと、さっぽろ雪まつりの雪集めも大変になりそうですね、患者さんとそんな話もしていました。
 
クリニックへリハビリテーションに通われているパーキンソン病患者さん。他院でパーキンソン病と診断を受け、薬剤治療が始まり、半年前からクリニックへリハビリテーションに通っておられます。語り口が柔らかい、とても穏やかな女性で、ご夫婦で長年登山をされているとのこと。日本百名山の完登を目指して(!)全国の山々を歩いておられます。
 
パーキンソン病を発症する前から山歩きをしていた影響でしょうか、彼女は70代を迎えても骨格や筋肉は比較的しっかりしています。リハビリテーションに足繁く通っていて、診察室での表情もだいぶ柔らかくなってきた印象です。先日の診察室では、山の話で持ち切りとなり、彼女が登って感動した山の話や、北海道の山の厳しさの話を聞くことができ、すっかり高揚した私の脳はドーパミンが増えていきました。診察室を出るとき、彼女が振り返って、「普段山の話をできることがなかなかないので、なんだか元気になれた気がします」と言って、リハビリテーションへ向かっていきました。
 
自分の好きなこと、ちょっと上手くいったこと、生活で苦労していること…自分が感じていることを相手と共感できたときの、あの何ともいえないホッとした安心感のようなもの。少し満たされてドーパミンが増えていく感覚は、パーキンソン病患者さんに限らず、すべての人が感じる感覚ではないでしょうか。自分が感じていることをオープンにしてちょっと口に出してみる。なんとなく難しく感じることもありますが、見返してみると、家庭だったり、知人だったり、診察室だったり、共感できる場所は、意外と身近にあるのかもしれません。
 
 
~涸沢小屋と北穂高岳(北アルプス)

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩