Dr Makoto’s BLOG

理想のパーキンソン病治療薬とは

パーキンソン病2024.08.19

お盆を迎え、高校野球・甲子園では熱戦が繰り広げられていますが、気付けば朝夕は秋の気配を感じるようになってきました。

パーキンソン病治療薬の使い分けについて、患者さんやご家族、様々な医療機関のスタッフからよくご相談をいただきますので、そのお話に触れてみたいと思います。
大きく分けると3つのパーキンソン病治療薬があります。
 ①ドーパミンに変換される「レボドパ」
 ②ドーパミン分泌を促す「ドパミンアゴニスト」
 ③間接的にドーパミン濃度を上昇させる「補助薬」 

ところで、「理想のパーキンソン病治療薬」とは、どのようなものでしょうか?
私が思うに、「ドーパミン濃度がしっかり上昇して、ドーパミン濃度の変動も少なく、10年以上使用してもドーパミン濃度が安定する薬剤。そして、ジスキネジアやウェアリング・オフ、幻覚や眠気など副作用が少ない薬剤。」と言えるかもしれません。
 
このような「理想のパーキンソン病治療薬」があれば、パーキンソン病診断当初から使用することで、病状がながく安定していくはずです。ところが、残念なことに、現状ではまだこのような理想の薬剤はなく、世界中で日々研究が行われているところです。
 
さて、前述した3種類の薬剤はそれぞれに特徴があり、効果や副作用の点から一長一短があります。さきほどの「理想のパーキンソン病治療薬」に、これら3種類の薬剤を照らし合わせてみるとどうなるでしょうか?
 
「ドーパミン濃度がしっかり上昇して」 レボドパ>ドパミンアゴニスト>補助薬
「ドーパミン濃度の変動も少なく」 ドパミンアゴニスト>補助薬>レボドパ
「10年以上使用してもドーパミン濃度が安定する薬剤」 ドパミンアゴニスト>補助薬>レボドパ
「ジスキネジアやウェアリング・オフ(が少ない薬剤)」ドパミンアゴニスト>補助薬>レボドパ
「幻覚や眠気が少ない薬剤」レボドパ>補助薬>ドパミンアゴニスト
 
このように、レボドパは効き目が強いもののながく安定しにくい、ドパミンアゴニストはやや効果に劣るもののながく安定しやすいという特徴があります。そのため、お年を召した患者さんにはレボドパが主体の治療、比較的若い患者さんにはドパミンアゴニストが主体の治療、というのが大きな考え方です。そして、レボドパとドパミンアゴニストの弱点を上手く補うために補助薬を用いていきます。
そうは言っても、患者さんのライフスタイルや考え方・人生観によってはこの限りではありませんので、100人のパーキンソン病患者さんがいれば、100通りの薬剤処方があるのというのが実際のところです。
 
なお、最近では3種類(レボドパ・ドパミンアゴニスト・補助薬)の薬剤治療に加えて、デバイス補助療法(DATS)と呼ばれる治療も広がってきています。DBS(脳深部刺激療法)、LCIG(レボドパ/カルビドパ配合剤持続経腸療法)、レボドパ持続皮下注射療法が可能ですが、既存3種類の薬剤治療でなるべくドーパミン濃度が長く安定し、ウェアリング・オフやジスキネジアを最小限に抑えるように治療をすすめています。
 

~三俣蓮華岳からみる双六台地と槍ヶ岳

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩