クリニック2018.10.09
もし、パーキンソン病や多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などのいわゆる神経難病にご自分やご家族・知人が罹ったとき。患者さん自身の治療意欲に加え、御家族や知人といった周囲の十分な理解や協力があると、とても大きな支えになることでしょう。
病気に関わらず、さまざまな人間関係において、周囲の人が自分との関係をどのように考えているか?自分との距離感をどのように感じているか?・・・程度の差こそあれ、誰しも気になるところではないでしょうか。
パーキンソン病患者さんが、身体がだるくて家族に家事をお願いしたいような場面をイメージしてみます。「私の身体がだるいので今晩のごはんは簡単なものでよいかしら?」と尋ねるとき、「わかったよ」「大丈夫だよ」といった好意的な返事をもらえれば問題はないのかもしれませんが、状況によってはそういかないこともあるわけです。自分の期待している返答とズレが出てしまったとき、それが繰り返されると、頼むことで相手に負担をかけてしまうのではと感じ、なかなか周囲への手助けを求めにくくなっておられる患者さんも拝見します。
「もし、私の身体がだるく、今晩のごはんは簡単なものでよいか、っていったらどう思う?」
「もし」という枕詞をつけることで、返答がイエス・ノーの二択に限定されず、相手に考える余裕を与えることができ、聞かれた方は返答しやすくなります。仮に好意的な返事が返ってこなくても、相手に負担をかけてしまうのではという気持ちが和らぎますので、今後似たような場面があっても、周囲へ手助けを求めやすい状況をつくれるような気がします。
もし、という枕詞は婉曲的・遠まわしな表現とも言えますので、目の前で困っていることがあるときやストレートに伝えたいときには得策でないかもしれませんが、「もし、自分が元気になったら一緒に何が食べたい?」「もし、自分に車いすが必要になったらどうする?」…ちょっと先の将来をイメージするとき、御家族や知人との距離感を測るのに、双方に負担のかかりにくい・柔らかい枕詞となるかもしれません。
このように、コミュニケーションにちょっとした工夫をして、患者さんが御家族や知人とイメージを共有する提案をできることは、大きな支えになることと感じています。逆に、ご家族や知人が患者さんとイメージを共有する提案をできることも、大きな支えになることでしょう。クリニックに来られるコミュニケーション豊かな患者さんとご家族のやり取りを拝見していて、最近感じたことです。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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