クリニック2019.01.15
先日クリニックの言語療法・訪問リハビリテーション開始にあたり、訪問診療で伺った患者さん。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患いながらもお一人で自宅療養を継続されています。私が彼女に初めてお会いしたのは約6年前、前職の病院に勤めていたとき。仕事・家事に加えてジムなどの趣味をも謳歌しているときに、手に力がはいりにくくなったために診察に来られたのです。
当時から活力に満ちた女性で、ALSの診断がついてからも、定期通院に来ては、逆に私や看護スタッフを笑わせてくれるような、実に懐の深い方です。お話しすることが大好きのご様子で、手足が不自由になっていっても、気心の知れた友人と旅行に行ったときの、新しく見たもの、美味しかった食べ物、印象に残った風景、友人との笑い話などを事細かに聞かせてくれました。
そして、前職を退職するとき、将来訪問リハビリテーションでまた会いしましょう、と約束をしていました。
前職の看護師や、担当ケアマネジャーを通じて、現在もお一人で自宅療養をされていることは伺っていました。訪問看護・訪問介護などの必要なサービスが導入され、多くのスタッフが彼女に関わっています。そして、何よりも彼女の太い意思があったからこそ、現在まで自宅療養ができていることと感じています。
2017年4月にクリニックの訪問リハビリテーションが開始しました。ケアマネジャーを通じて、彼女が言語療法の訪問リハビリテーションを希望していると伺いましたが、当時はまだ言語療法までは賄えていませんでした。今回、2018年12月よりクリニックの訪問リハビリテーションで言語療法が開始となり、ケアマネジャーへ、恐る恐る言語療法が開始となったことをお伝えしたところ、彼女から二つ返事で希望をいただきました。
そして先日、訪問診療で約5年ぶりに、また会えました。十分な手足の動きとは言えず、呂律や飲み込みにも不自由さを伴っておられましたが、優しい・暖かい顔の表情は以前そのままです。
とくに在宅療養では、ひとつの繋がりが、さらに広い繋がりを呼び寄せていくような気がしています。病気は完治することがいちばんの満足かもしれませんが、たとえ完治しなくても満足を高めることはできる。私たちはそう信じてこれからも関わっていきますし、きっと彼女もそう思いながら毎日の生活を過ごしているのではないかと感じています。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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