パーキンソン病2019.02.05
2月にはいり、おそらく一年でもっとも寒い時期を迎えています。
今週は強い寒波が到来し、最高気温が-10℃以下とのこと…今から身震いしてしまいそうですが、ここは「あと2ヶ月で春が来る」と念じることにしましょう。
先日クリニックに来られたパーキンソン病患者さん。
子育てや家事に加え、毎日の仕事も精力的にこなす、私と同世代の女性です。パーキンソン病と診断を受けて2年弱、まだ薬の治療は受けていませんが、症状が次第に目立っていくことを実感し、リハビリテーションをふくめた相談のために受診されました。
お話しを聞きますと、一通りの日常生活をこなすことはできるものの、どうも手足がつかいにくくなっている。ドライヤーで髪を乾かす、歯磨きをする、包丁で刻むといった、リズミカルな動作がどうしても上手くいかないようです。
そして、繰り返し仰っていたのが「歩き方がわからない」ということ。
犬を散歩に連れていくときは、意識せずに割と問題なく歩けるようですが、買い物や街中など人目に触れるような場面になると、途端に「歩き方がわからなくなる」そうです。
実際に診察室で歩いている姿を拝見すると、脚を大きく踏み出そうと意識している様子が良く伝わってきます。細かく見ていきますと、肩に力が入ってしまうために左右の腕をリラックスして振ることができない、肩甲骨に力が入ってしまうために上半身を捩るような動きが小さくなってしまう、そしてその結果、骨盤が固定されてしまっている歩き方になっています。
脚を大きく踏み出すことはもちろん大切なことです。ところが、上半身に力が入り、骨盤が固定されてしまう状態では、膝と太腿を高く持ち上げることにどうしても意識が集中してしまいます。膝と大腿を持ち上げるときに働くのは腸腰筋という、腰(腰椎)と大腿をつなぐ、身体で最も大きな筋肉です。このような歩き方は、腸腰筋を意識的に動かすために、疲労が溜まり易く、長い距離を歩こうとすると次第に膝と太腿が下がってしまい、ひきずったような歩き方になってしまいます。
理想の歩き方は、腸腰筋が自然に連動して動くような状態が良いと考えています。いわゆる「モデル歩き」「風を切って歩く」ような状態をイメージするとよいかもしれません。そのためには、肩の力を抜いて左右の腕を前後に振る、そして肩甲骨の力を抜いて背骨(脊柱)を中心に回旋させ、上半身が捩れるような動きを出していく。そうすることで骨盤が前後方向へ回旋し、腸腰筋が引っ張られ、自然に膝と大腿が持ち上がるようになっていきます。
脚を大きく踏み出すには、上半身の脱力・リラックスが大切…書くのは簡単ですが、このために多くの方がリハビリテーションに励んでおられます。この患者さんをはじめ、多くの患者さんがさらに自信を持って歩くことができるよう、これからも関わって参ります。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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