Dr Makoto’s BLOG

MS(多発性硬化症)とジャクリーヌ・デュ・プレ

多発性硬化症2017.01.14

ジャクリーヌ・デュ・プレという方をご存知でしょうか?

20世紀半ばに世界的に活躍した女性チェリスト(チェロ奏者)で、
まるで男性のような力強い音を響かせて、数多くの名演を残しました。
デュ・プレは演奏者として絶頂期の26歳にMS(多発性硬化症)を発症したのです。

私が学生時代で音楽に明け暮れていたころに、
「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」という彼女の自伝映画が公開され、
その映画を見たことが、現在の神経内科医を志すきっかけのひとつになっています。

MSは神経内科の病気のなかでも比較的若い、20-30代で発症することが多い病気です。
多くの方が、学業・仕事・恋愛・結婚・出産などを経験する、
人生でもっとも輝かしい時期とも言えますが、
デュ・プレも演奏家として、妻として、華やかな時期にMSを発症しました。

映画のタイトルに込められた「ほんとうの」という言葉は、
病気をきっかけに、無常にも社会と距離を置かざるを得なくなったことで、
誰しも抱えている弱みやコンプレックスが歪んでしまったことを意味しているともとれます。
ただ一方で、感情に従順でとても人間的なデュ・プレが描かれていることが、
「ほんとうのデュ・プレ」に込められた思いとして、今でも救いのように思い出します。

残念ながら当時はMSに有効な治療法はありませんでしたが、
現在は数多くの治療法が確立され、
多くのMS患者さんが学業・仕事・恋愛・結婚・出産をされ、
社会で活躍されています。

時代が変わっても、どんな病気でも、
発症することによる、ある種の歪みは避けられないのかもしれませんが、
一方で、それ通じての奥深い人間味のようなものが、
にじみ出てくるのではないかと、強く感じています。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩