パーキンソン病2019.07.15
7月も中旬に差しかかり、気温も暖かく、緑も青々としています。あとは、もうちょっと太陽が顔を出してくれれば、いよいよ夏の気分を満喫できるのではないでしょうか。
大通公園ではビアガーデンのオープン作業が着々とすすんでいるようです。
パーキンソン病にはたくさんの診察方法があり、おそらく医師ごとにさまざまな診察方法をとっているのではないかと思います。パーキソン病患者さんの診察は、お話のなかで最近の状態や変化を伺いながら、顔の表情や声の状態、筋肉の硬さ(固縮)、手足の細かな動き、姿勢、歩行の状態、血圧の変化(起立性低血圧)などを評価していくのが基本になります。
私の診察を受けておられる患者さんはお気づきかと思いますが、毎回「バンザイ」と「キラキラ」をしていただくようにお願いしています。先日患者さんから「バンザイとキラキラってどのような意味があるのですか?」と尋ねられましたので、簡単に触れてみたいと思います。
「バンザイ」
その名の通り両手を真上に上げてバンザイする、本当にそれだけです(笑)。
多くのパーキンソン病患者さんはバンザイをしても手が真上へ上がりにくく、少し前のところで止まってしまいます。そこで「もうちょっと上げてください」とお願いすると、いくらか手は伸びるようになりますが、なかなか真上に到達する方は少ないのです。
これは肩甲骨から肩にかけての筋肉の硬さを簡便にみることができる方法で、このあたりの筋肉が硬く・張りやすいパーキンソン病の患者さんはスッと真上に到達しにくい方が多いのです。
「キラキラ」
3つのキラキラを順番に行っていきます。
①一方の腕を身体の正面で水平になるまで持ち上げ、そして肘をクッと90度に曲げて手指が天井を向くよう
な姿勢をとります。その状態で手のひらをクルクル・キラキラと回すことで、肩から上腕にかけての筋肉
の硬さをみています。
②一方の腕を身体の正面で水平になるまで持ち上げ、その状態で手のひらをクルクル・キラキラと回すこと
で、肩から上腕にかけての筋肉の硬さをみています。
➂座った姿勢で、手のひらを膝のうえに置き、その状態で手のひらを表・裏と交互に、キラキラと、膝に触
れるように裏返す動作を続けます。このキラキラは前のふたつのキラキラとは異なり、肘を持ち上げない
ので、肩から上腕にかけての筋肉を使用しません。このキラキラは筋肉の硬さよりも、どちらかというと
脳からの指令がうまく伝わっているかをみています。
多くのパーキンソン病患者さんは、肩から上腕にかけての筋肉が硬くなってしまうため、肘を上げたときのキラキラ、つまり①と②の動作がぎこちなくなってしまします。ところが、肘を下げたときのキラキラ、つまり➂の動作は、肩や上腕の筋肉を使用しないため、比較的上手に行うことができます。➂もなかなかうまくいかない場合には、パーキンソン病のほかに、脳からの指令が上手く伝わらない「失行」という要素があるかもしれないと、判断することができます。
毎回の診察で何気なくお願いしているバンザイとキラキラ。肩甲骨から肩、上腕にかけての硬さをみるのには非常に簡便で分かりやすい診察方法ではないかと感じています。内服治療やリハビリテーションがはじまると、バンザイとキラキラが少しずつ上手になっていく患者さんもおられます。
先日、診察室に入る前の待合室で、バンザイとキラキラをこっそり練習されていたパーキンソン病患者さんの姿が、とても微笑ましく映りました。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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