Dr Makoto’s BLOG

歳をとったら丸くなる?硬くなる?

パーキンソン病2025.04.21

 
4月22日、札幌の桜の開花予想日がやってきます。実際に公園を歩いてみると、桜の蕾が膨らんできていました。いよいよ、この季節がやってきました。
 
「歳をとると時間が過ぎるのがはやくなる」とは、よく言われることです。目新しい経験が減ってしまうために、時間がはやく過ぎると感じるようです。三度の食事、家事や入浴、職場との行き帰り、決まった時間のテレビニュース…きっと、日常生活で多くのことはルーティン化されているのではないでしょうか。それでも、同僚や家族との会話での新しい情報、衝撃的なニュース、とても暑い日・寒い日、桜の開花や大雪、人様との関わりで嬉しいこと・悲しいこと…毎日の生活では、ルーティン化されない、目新しい経験、気持ちが揺れ動くような経験もたくさんあるのではないでしょうか。
 
さて、「ワーキングメモリ」をご存知でしょうか?ワーキングメモリは、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力のことで、言い換えると「脳の処理能力」のことです。
 
たとえば、「新しいレシピを料理していて、コンロを同時に3つ使っているようなとき」を考えてみましょう。脳は目新しい料理に集中しているはずです。もし、そんなときに電話が鳴ってしまうと、どうなるでしょうか?脳の処理能力を超えてしまうので、「どうしよう?料理を中断しようか?電話に出ないでおこうか?」と考えるようになります。これは、ワーキングメモリを無意識に感知し、処理能力を超えないように脳が反応している状態です。
 
日常生活のなかで、忙しくてするべきことが重なってしまったり、一度に色んな情報がはいってしまうと、ついつい脳がパンクしてしまうのは自然なことです。脳がパンクしているときは、だいたいイライラしたり、戸惑ったり、焦りが出るようになります。このように、自分の脳の処理能力(ワーキングメモリ)を察知できると、無意識に危険を回避するようになり、脳は物事を自然とルーティン化する仕組みになっています。「歳をとったら丸くなる」というのも、その影響かもしれませんね。実はそのおかげで、普段から平常心を保つことができるようになり、イライラしたり、戸惑ったり、焦ることが減るようになっています。
 
ちなみに、このワーキングメモリは、加齢とともに小さくなっていきます。世間では、小さくなったワーキングメモリのことを「頭が硬くなる」と言ったりします。ワーキングメモリを増やすためには、ルーティン化も大切ですが、ルーティン化されないような目新しい経験、気持ちが揺れ動くような経験も同じくらい大切のようです。そんなことを感じながら、今年の桜を楽しんでいこうと思っているところです。


~雌阿寒岳からみる阿寒湖

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩