Dr Makoto’s BLOG

ドーパミン濃度を安定させるために ~CDSとは?

パーキンソン病2019.07.29

北海道にもいよいよ夏本番の暑さがやってきました。
湿度の高さが気にはなりますが、クーラーも除湿器もない自宅では、せめて涼し気な音楽を流して、気分だけでも涼しくしたいと思っているところです。

パーキンソン病の薬物治療で柱となるレボドパ。
古くからある内服薬で、減っている脳内ドーパミンを補充するのに効果的。現在でも多くの患者さんが内服し、その効果は患者さんも私たちスタッフも実感するところです。レボドパを内服し、ドーパミンが補充されると、多くの患者さんは30分ほどで身体が動きやすく、歩きやすくなり、振戦も軽くなるようになります。この「切れの良さ」がレボドパの一番の利点ですが、一方で、半減期といって、薬の血中濃度が下がる時間が短いことも特徴で、そのため薬効の切れがはやいのが今も昔も課題と考えられています。

パーキンソン病早期の脳では、ドーパミンの分泌が減りながらも、ドーパミンの再取り込みという、いわば「ドーパミンのリサイクル」が懸命に行われています。ドーパミンの濃度をなんとか保つために、脳が頑張ってドーパミンをリサイクルしているのです。ところか、パーキンソン病が長くなってくると、リサイクルの頑張りがだんだん効かなくなってしまい、再取り込みが下がってきてしまうため、次第に治療薬・レボドパの補充に頼らざるを得なくなっていきます。やがて、レボドパが効いている時間は動けるものの、切れると調子が優れなくなる、いわゆるオン・オフと呼ばれる状態が出てくるようになってしまいます。

このようなオン・オフは、どのような患者さんに起きやすいのでしょうか?一般的には、発症年齢が若い患者さん、そしてレボドパの過剰な内服がある患者さんにオン・オフが起きやすくなると言われています。とくに、レボドパを一日数回内服し、濃度が急激に上がったり下がったりすること(パルス刺激とも言います)が、オン・オフに繋がりやすいと考えられています。

そのために、最近はレボドパ以外の治療薬を併用することで、レボドパの量が過剰にならないように、そして濃度の変動が大きくならないように、早い時期から工夫・調整することが勧められています。レボドパひとつをどんどん増やしていくより、色んな治療薬を併用していくほうが、長い目でみるとオン・オフと呼ばれる運動合併症のリスクが下がるためです。ドーパミンアゴニストと呼ばれる一日1回の治療薬、そのほかにも多くの治療薬がありますが、いずれもドーパミン濃度を安定して保つことができるように使用・開発されています。

continuous dopaminergic stimulation(CDS)と呼ばれている、ドパミン濃度を一定に保つようにする治療方法。とくに70歳以下の患者さんではこの治療方法に沿って治療をすすめていますので、頭の片隅にいれていただけますように。

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩