Dr Makoto’s BLOG

生活により安心を 訪問看護ステーションのしくみ 

クリニック2021.09.12

クリニックに通院されている患者さんには、自宅に看護師さんが訪問してくれる「訪問看護」を利用している方が多くおられます。神経難病患者さんへの訪問看護は、どんなことをお願いできるのでしょうか?
 
いちばん多いのは、少し薬が増えてきた患者さんへ、適切に服薬管理や指導をすることかもしれません。また、自宅での身体の状態を細かく観察していただき、パーキンソン病の日内変動はもちろん、食事量や嚥下・ムセの観察から、排便や排尿の観察までお願いすることもあります。多くの患者さんの悩みの種である便秘に対して、訪問看護師さんに下剤の細かな調整をしていただく方も多いようです。訪問看護師さんからはクリニックへ毎月報告書をいただけるので、私たちも患者さんの細かな様子を知ることができるのです。
 
そして、胃ろうや膀胱留置バルーン、人工呼吸器などの医療的処置を受けている患者さんにとって、訪問看護師さんは欠かせないサポーターです。十分に食事をとれなかったり、体調が良くないような場合に、クリニックからの指示のもと訪問看看師さんに自宅で点滴をお願いすることもできるのです。
 
さらに、最近はリハビリスタッフが在籍している訪問看護ステーションも増えています。「訪問看護」という名目ではありますが、実際には自宅でリハビリテーションを受けることもできるようになっています(もちろん看護師さんも訪問します)。
 
この訪問看護サービス、介護保険が利用されることが多いのですが、大半の神経難病患者さんは医療保険を利用することができるのです。つまり、介護保険の認定を受けていなくても、クリニックから訪問看護ステーションへ直に依頼することが可能です。訪問看護は特定医療費、いわゆる難病手帳の助成対象になりますので、月々の自己負担上限を超える医療費は発生しない仕組みになっています。難病手帳をお持ちの患者さんは、経済的にも導入しやすいサービスとも言えます。
 
おそらく、日常生活の一通りをこなせる患者さんにとっては、訪問看護の必要性は低いかもしれません。一方で、なかなか体調が安定しなかったり、患者さんやご家族が自宅での生活に不安を感じているような場合には、訪問看護をお願いすることで、気持ちがだいぶ楽になったと言う方も多くおられます。
 
クリニックでの診療やリハビリテーションに加え、訪問看護などの利用できるサービスを上手に取り入れることで、きっと、生活に安心が増すはずです。先日いらしたパーキンソン病の女性患者さんが、今夏から訪問看護を導入したところ、表情が一気に明るくなったのを目の当たりにして、改めてそう感じているところです。

 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩