パーキンソン病2021.11.08
札幌の紅葉シーズンも終わりを迎え、毎朝落ち葉拾いの日々が続きました。拾っても拾って積もっていた落ち葉が、ここ数日でだんだん減ってきています。例年になく遅れている札幌市内の初雪が、そろそろやってくるようですね。
パーキンソン病患者さんで多くみられる「筋強剛」という症状。
簡単に言うと「筋肉の硬さ(緊張)」で、硬さの程度は患者さんによって実に様々です。
毎回の診察では患者さんの筋肉の硬さを診ていきます。長年の硬さのために姿勢が歪んでしまう患者さんもいれば、ほとんど硬さが感じられないような患者さんもおられます。また、毎回の診察で硬さがさほど変わりない患者さんが多いなかで、なかには(薬が効いている時間帯でも)毎回硬さが大きく変化する患者さんを拝見します。
最近改めて感じているのは、「精神的な緊張がダイレクトに筋肉の硬さ・緊張に影響する」患者さんが、少なからずおられるということです。
筋肉の硬さが強くなって、全般にパーキンソン病症状が目立ってきたときには、ドーパミンを中心とする抗パーキンソン病治療薬の調整を考えていきます。そこで、ドーパミンがしっかり補充されることで筋肉の硬さが軽くなる方が多いのですが、実は、なかには期待以上に筋肉の硬さが軽くなる方がおられます。同じドーパミン補充をしても、どうして効果にこのような違いが出てくるのでしょうか?
「ドーパミン効果がはっきり出やすい患者さん」の特徴は、診察の度に硬さが大きく変化する傾向がある患者さん、と考えています。つまりは、おそらく精神的な緊張がダイレクトに筋肉の硬さ・緊張に影響する印象を持っています。例えば、自宅では比較的歩けるけれど人込みをみたり・人込みに入ると途端に動きが難しくなる、職場でのデスクワークは出来るけれども急な電話対応になると途端に手や口の動きが硬くなってしまう、さっき1分前までよかったけれど途端に身体全体の動きが硬くなってしまう。どれも、脳からの指令によって都度緊張がかかって変化する筋肉の硬さです。
筋肉の硬さは、大きく分けて2つあると考えています。ひとつ目は、時間をかけて蓄積されてきた筋肉そのものの硬さ、ふたつ目は、脳からの指令によって都度緊張がかかって変化する筋肉の硬さです。前者の硬さには言うまでもなくリハビリテーションが大切です。おそらく後者の硬さには、薬剤の治療効果がはっきり出やすい印象を持っていて、こうした患者さんはドーパミンを一定程度しっかり補充することで、精神的な緊張・さらには筋肉の緊張を和らげることができるように思います。また、ドーパミンのほかにも、脳の精神的な緊張を和らげるために、セロトニンを補充するなどの治療も筋肉の緊張を和らげる効果があると考えています。
「筋強剛」と一言でいっても、患者さんによって症状は様々で、治療のアプローチも変わってくると感じています。日本神経学会で作成された「パーキンソン病治療ガイドライン」という標準的な治療が診療の基本ではありますが、まだまだ分かっていないこともたくさんあります。日々多くのパーキンソン病患者さんから学ばせていただき、少しでも患者さんへ還元していきたいと思っています。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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