クリニック2021.12.04
なんとか無事に年越しができそうです、よいお年を。
毎年のこの時期、診察室で聞かれる挨拶ですが、今年もあっと言う間にその時期がやってきました。
先日クリニックにいらした多系統萎縮症の患者さん。
彼女は、数年前から身体がふらつくようになり、受診した病院で検査の結果、多系統萎縮症と診断を受けました。多系統萎縮症とは小脳(ふらつき)、基底核(パーキンソン様の症状)、自律神経(血圧の変動や排尿障害)からくる様々な症状を呈する神経難病です。
お子さんたちは独立され、自宅ではご主人と二人で生活しておられます。仕事をしているご主人は、彼女の家事をサポートし、最近は周囲のご家族も遠方から来て支援しておられるようです。まだ比較的若い彼女ですが、昨年は行けていた散歩が今年になって難しくなってきたため、トレーニングのため自宅マンションの階段を登る運動に励んでおられます。今の身体の機能を維持したい、生活を少しでも楽にしたい、不安を軽くしたい…そんな思いを持ちながら、今後の治療・リハビリテーションを希望してクリニックへ相談にみえました。
多系統萎縮症をふくむ神経難病の治療は、大きく分けてふたつのアプローチがあります。
ひとつめは、薬剤治療、リハビリテーションといった身体機能そのものを回復させるアプローチです。多系統萎縮症の患者さんには、リハビリテーション、内服薬(タルチレリン)、注射薬(プロチレリン)を3本柱として、効果が認められている最大限の治療をクリニックで続けていきます。
ふたつめは、介護保険サービス(デイサービス・訪問介護)、医療保険サービス(訪問看護・訪問リハビリテーション)といった在宅環境を整えるアプローチ。日常生活のなかで体調を整え、生活を少しでも楽にするために、欠かせない治療と言えます。
そして、神経難病の治療にあたって、いちばん大切なことは、「どれだけの治療を納得するまでできるか」という点だと感じています。病気を抱えながら生活するというのは、患者さんはもちろんのこと、家族にとっても大きな課題です。生活のために仕事もしたい、患者さんのサポートもしたい、自分の時間も少しは欲しい…家族にとっても切実な悩みであります。
みなさん大きな不安を抱えながら生活をしておられますが、「納得する治療を行えている」という安心感は、毎日の介護生活のなかでも、きっと不安を軽くしていくはずです。
クリニックでは薬剤治療やリハビリテーション、在宅環境の整備、身体障がい手帳の申請、障害年金の申請など、患者さんとご家族が「少しでも困らないような方法」を色んな方面から考え、提案していきます。診察室でも、待合室でも、リハビリテーション室でも、お気軽にクリニックのスタッフへご相談ください。
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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