Dr Makoto’s BLOG

社会福祉制度は使いよう

パーキンソン病2022.10.10

夏日で始まったはずの10月でしたが、その数日後に初冠雪のニュースが届きました。
一気に季節が進み、ついつい暖房が恋しくなる時期がやってきています。
 
先日クリニックにいらしたパーキンソン病患者さん。まだまだお若い男性で、家族の大黒柱として日々大変頑張っておられます。おもにパーキンソン病の治療と就職に関する相談のためにご家族とクリニックへ来院されました。
 
数年前に原因がわからない手足の不調が続いてしまい、お仕事の退職を余儀なくされ、その後やっとたどり着いた前の神経内科の病院でパーキンソン病であることが分かりました。パーキンソン病の薬剤治療が開始となりましたが、なかなか細かな作業が満足にいかず、体力的な心配もあって、就労継続支援事業所でこれまで毎日仕事に励んでおられます。
 
加えて、毎日の仕事と並行してハローワークの「みどりの窓口」にも通いながら、企業への就職活動もされています。「みどりの窓口」とは、病気や障害をお持ちの方を対象に求人を紹介したり、支援プログラムなどを提供し、就職に関する様々なサポートを受けられる組織です。ご自身のパーキンソン病症状でも大変ななか、家族を養っていくための前向きな姿勢に本当に頭が下がる思いです。
 
クリニックで拝見しますと、薬が効いている時間は、右手足を中心に筋肉のこわばりがあり、運動のぎこちなさがありますが、受け答えはしっかりされています。伺うと、一日のなかでも調子に変動がある様子で、これからの通院で細かく体調を観察しながら治療をすすめていくこととしました。
 
そして、仕事については、まだまだ食べ盛りのお子さんを育てていくためにも、企業への就職が欠かせないと、切羽詰まった様子です。みどりの窓口で様々なサポートを受けてこられ、一般の就職のほかにも障害者雇用での就職も考えておられますが、障害者雇用に必要な身体障害者手帳の相談をこれまで繰り返してきたものの、叶わなかった経緯があるようでした。
 
身体障害認定には手足や身体の動きに厳密な規定がありますので、規定に該当しない場合には認定されませんが、細かく彼の身体の状態を観察していくと、合算で身体障害が認定される状況にありました。身体障害者手帳は、障害者雇用での就職も可能となり、重度では医療費の控除を受けることができたり、そのほかにも税金の控除や交通サービスの助成を受けることができますが、細かな内容までは広く周知されていないのが現状です。
 
このような制度は、症状が該当すれば手続きをすることができますが、症状が進んだら一律に手続きをする、とも限らず、どちらかというと「制度を利用して何をするか」という目的が大切と感じています。彼のように、身体障害認定を受けて障害者雇用枠での就職をしたい、というのはひとつの重要な目的になりますし、それで生活が少しでも安定するのであれば、とても有用な手段です。
 
薬剤やリハビリテーションの治療はもちろん、生活で困っていることへどのように社会福祉制度を利用していくか、それぞれの患者さん・ご家族によって目的は異なってくることでしょう。「社会福祉制度は使いよう」だと感じています。
 

~徳舜瞥山と遠くにみえる羊蹄山

 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩