パーキンソン病2023.03.26
待ちに待った春に、クリニックスタッフが入籍したお知らせが重なり、愛でたいことが続いています。日本中が感動したワールドベースボールクラシック(WBC)、決勝ではクリニックのテレビ前が患者さん・ご家族の熱気に包まれていました。
パーキンソン病患者さんには日中に眠気を感じる方がおられます。朝から一日中眠気を感じる方もいれば、急に襲われるような眠気を感じる方、また薬の内服後に眠気を感じる方など、様々な感じ方があるようです。強い眠気は家事や仕事へ影響することもありますので、クリニックの診察室では、患者さんへ眠気を感じることがあるか尋ねるようにしています。
眠気の原因は、薬剤に関連するもの、パーキンソン病に関連するもの、内科的な疾患によるもの、睡眠時無呼吸症候群など実に様々です。なかでも、クリニックにいらしている患者さんは①薬剤に関連する眠気と、②パーキンソン病に関連する眠気が多い印象を持っています。
まず、薬剤に関連する眠気では、ドパミンアゴニストが眠気を生じやすく、日中ずっと眠気を感じたり、急に眠気に襲われるような場合があります。急に襲ってくる眠気は「突発性睡眠」とも言われ、原則として運転を控えて下さいという但し書きもあるほどです。多くは薬剤を減量・中止することで眠気が改善するため、止むを得ず薬剤を中止することもあります。一方で眠気のためにドパミンアゴニストを十分に使えないことは、長期にみて治療の幅が狭くなるため、悩ましい問題でもあります。
次いで、パーキンソン病に関連する眠気では、診断の初期から眠気を感じる方もいれば、数年経ってから眠気を感じる方など、眠気の出方にも幅があります。そして、一日を通じて眠気を感じる方が多く、伺うと考えがまとまりにくくなったり意欲が減退している方も多い印象です。レビー小体型認知症というパーキンソン病の類縁疾患を伴うと、このような眠気などが出やすくなっていきます。
このレビー小体型認知症とパーキンソン病。実はどちらもレビー小体という異常なタンパク質が脳に貯まってしまうために起きる病気で、本質的には同じ原因と考えられています。異なるところは、レビー小体が「脳のどこに蓄積するか」によって症状が変わっていきます。大きく分けると、レビー小体型認知症は、脳の表面、大脳皮質にレビー小体が蓄積することで眠気、考えのまとまりにくさ、意欲の減退、幻視などが出現しやすくなります。一方のパーキンソン病は、脳の奥、脳幹にレビー小体が蓄積することで、振戦、動作緩慢、筋固縮などが出現しやすくなります。
たとえば、ふるえや動作緩慢などのパーキンソン病で治療を続けてきた患者さんが、次第に眠気を感じるようになってきたとき。使用しているドパミンアゴニストなど薬剤の副作用による眠気の可能性を考えて、薬剤を調整することもあります。また、考えのまとまりにくさや意欲減退が目立つ場合には、レビー小体が脳幹にとどまらず大脳皮質にも蓄積していき、レビー小体型認知症を伴っている可能性を考えていきます。レビー小体型認知症を疑うときには、SPECTという脳血流を測定する検査で、大脳皮質(とくに後頭葉)の血流が低下していないかを確認していきます。
個人的に留意していることは、レビー小体型認知症と言うと、「認知症」というインパクトが強いため、どうしても患者さんやご家族は不安を感じやすくなります。レビー小体型認知症の症状は個人差が大きく、なかには眠気が主体で記銘力の低下が目立たない方もおられます。パーキンソン病とあわせて「レビー小体病」の言い方が適切と思う患者さんも多くおられますので、病名を伝えるときには配慮をしています。
~機上からみる石狩岳と三国峠
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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