パーキンソン病2023.05.29
パーキンソン病の薬剤治療で中心となる薬剤、レボドパとドパミンアゴニスト。どちらも脳内ドーパミン濃度を効率よく高める効果があり、ほとんどの患者さんがいずれかの薬剤を使用されているのではないでしょうか。
一方で、治療補助薬と言われる薬剤に、MAO-B阻害薬やゾニサミド、イストラデフィリン、アマンタジンなどがあります。これらの薬剤はドーパミン濃度を直接高めるというよりは、別のところに働いて、結果として脳内ドーパミン濃度を高めていく働きがあります。これらの補助薬を上手に利用することができれば、レボドパやドパミンアゴニストの量を抑える効果が期待でき、より長い期間パーキンソン病を安定させることができるため、是非とも適切に使用したいものです。
これらの薬剤をどのタイミングで使用するか…これは医療機関や医師によって若干異なるかもしれません。どちらかというと、即効性を感じにくい薬剤でもありますので、患者さんによっては「効き目が良くわからない」という声も聞かれます。
とくに病初期でレボドパやドパミンアゴニストを導入したあと、長期にわたって薬剤の増量を抑えるために、私はMAO-B阻害薬を追加することが多いです。やや即効性を感じにくいMAOーB阻害薬、患者さんにいかに納得して継続していただくか、この「長期にわたって薬剤の増量を抑える」という目的を共有しないことには、患者さんが納得してMAO-B阻害薬を継続することが難しくなってしまいます。それでも最近のMAO-B阻害薬は導入後早期からも効果を感じやすくなってきていますので、患者さんの満足度が高まってきている印象をもっています。
レボドパを長期にわたって使用していくことで起こりやすいウェアリング・オフという、いわゆる「薬の効果が弱まってしまう」現象。このようなときにはレボドパを細かく内服したり、ドパミンアゴニストを増量するなどして、なるべくドーパミン濃度が安定するように治療していきます。前述したMAO-B阻害薬のほか、ゾニサミドやイストラデフィリンという補助薬も効果的です。ゾニサミドとイストラデフィリンの良い点は、副作用が少ないという点で、眠気や幻覚のといった副作用のリスクを抑えて、全体的なドーパミン濃度を安全に高めることができます。
MAO-B阻害薬、ゾニサミド、エンタカポン、イストラデフィリン、アマンタジンといった補助薬を上手に使用することができれば、パーキンソン病の治療の幅がグッと広がり、より長い期間にわたってパーキンソン病を安定させることにつながります。
ひとつ注意したい点は、これらの補助薬は薬剤代がとても高いということ。パーキンソン病の治療は、ながく続けていくことが大切ですので、かかる費用の点は避けては通れないところです。そのため、患者さんには指定難病制度を上手に利用したうえでこれらの補助薬を活用し、安心してながく治療が続けることができるように関わっています。
~手稲山からみる定山渓天狗岳
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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