パーキンソン病2023.07.16
先週末のうだるような暑さが過ぎ去り、今週は北海道らしからぬ蒸し暑い日が続いています。診察中の午後、窓の外が急に真っ暗になったと思ったら、スコールのような雨が降っていました。ここは本当に北海道?と不思議な天気に驚いています。
パーキンソン病患者さんのなかには立ちくらみを感じやすい方がおられます。横になったり座っているときには大丈夫ですが、立ち上がってから間もなくフワーっとしてきて、なかには目の前が遠くなって気分を崩す方もおられます。この立ちくらみは起立性低血圧と呼ばれています。学校の集会でずっと立っていると気分が悪ってしまう子どもがいるように、健康な方にも立ちくらみは起こりますが、パーキンソン病患者さんには起きやすい症状と言われています。
それでは、どうして起立性低血圧が起きるのでしょうか?
立った姿勢をとると、重力のために血液が下半身や内臓へ流れていってしまうため、心臓に戻ってくる血液量が減ってしまいます。心臓に戻ってくる血液量が減ってしまうと、心臓から送り出される血液量も減ってしまうために、全身の血圧を保つことができず、血圧が下がってしまいます。健康なときは、自律神経のはたらきで手や脚の末梢血管をギュッと締めたり、心拍数を増やすことで血圧が下がらないよう維持しています。ところが、パーキンソン病患者さんでは手や脚の末梢血管をギュッと締めることが十分にできず、心拍数も十分に増えないために血圧が下がってしまい、立ちくらみ(起立性低血圧)が起きやすくなってしまいます。
はじめてクリニックに来られる患者さんには、必ず横になった状態(臥位)と立った状態(立位)それぞれの血圧を測定しています。これは起立性低血圧があるかどうかをみているもので、収縮期血圧が20mmHg以上低下する場合には起立性低血圧の可能性を考えていきます。立ちくらみの自覚症状があれば分かりやすいのですが、注意したいのは、患者さんに自覚症状が全くなくても、起立性低血圧を示す場合があるということです。おそらく長い間続いた起立性低血圧に身体が慣れてしまい、立ちくらみを感じにくくなってしまうようです。
起立性低血圧が強くなると、立ちくらみに加えて、身体のだるさを感じやすくなったり、動作がさらに遅くなってしまうことがあります。これらの症状はドーパミン治療薬の補充ではなかなか回復しないため、起き上がりをゆっくりすることはもちろん、積極的な塩分・水分摂取が大切です。場合によっては血圧を上昇させる薬剤で治療をすることもあります。
パーキンソン病患者さんが立ちくらみ、身体のだるさ、動作が遅くなって来た時には、念のために自宅の血圧計で臥位と立位の血圧を測ってみてはいかがでしょうか。起立性低血圧が出ていないか確認してみることをお勧めします。
~白雲岳からみえる後大雪のゼブラ模様雪渓
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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