クリニック2023.09.18
いつもはこの時期になると紅葉のニュースが届き始めます。
今年は例年にない暑さの影響でしょうか、紅葉の出足が少し鈍いようです。
クリニックに通って約2年になる患者さん。マラソンから登山までこなすスポーツマンでとても爽やかな男性です。いつも穏やかな奥様と来院され、仕事の話や夫婦で趣味の山の話なども聞かせて下さいます。
クリニックには、身体のだるさやつかいにくさのために受診されました。拝見すると手足の筋肉に若干のこわばりがありますが、精力的にマラソンなどの運動もこなしておられました。それでもご本人はどうも体調が優れないとの様子で、脳内のドーパミントランスポーターを測定するDATスキャンを調べたところ、ドーパミンが僅かに低下していることが分かりました。
しばらくパーキンソン病としてドーパミン補充の治療をすすめてきたところ、この1年ほどで身体のふらつきを自覚されるようになりました。ドーパミン治療薬を調整したり、リハビリテーションも開始していきますが、どうもふらつきが芳しくないのです。そして、この夏からは診察でも体幹のふらつきを確認できるようになりました。
パーキンソン病患者さんにもふらつきを感じる方はおられますが、彼のふらつきはその範疇を超えてきているように見えました。ご本人と奥様に相談のうえ、バランスを司る小脳の働きを調べる脳血流検査を実施したところ、小脳の働きが十分ではないことが分かりました。
当初パーキンソン病に似た症状で始まり、経過を追っていくなかでパーキンソン病とは異なる症状が現れるときに、パーキンソン症候群というものも考えていく必要があります。パーキンソン症候群は、初期はドーパミン系の不調によるパーキンソン病に似た症状が中心ですが、パーキンソン病の治療薬であるドーパミン補充の効果が限定的であることが多いと感じています。次第に小脳などドーパミン系以外の働きも不調となってしまい、神経症状や脳血流検査などを総合してパーキンソン症候群と診断することになります。パーキンソン症候群には進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、多系統萎縮症などが含まれ、疾患によって症状は異なりますが、診断や治療・リハビリテーション・ケアは特に慎重にすすめています。
医療法人北祐会の大先輩医師のモットー、「No cure doesn’t mean no hope(たとえ治らない病気だったとしても,それは希望がないということではない)」。御本人とご家族が希望を持ち続けられるように、これからも関わらせていただきたいと思っています。
~朝焼けの穂高連峰と槍ヶ岳
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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