Dr Makoto’s BLOG

パーキンソン病患者さんの治療費が10,000円を超えると

パーキンソン病2023.12.03

新語・流行語大賞が発表されると、一気に年末感が出てきて、例年お決まりのように気持ちがソワソワしてきます。
今年の新語・流行語大賞は「アレ(A.R.E)」に決まりました。阪神の大躍進で、あれよあれよという間に、ほんとうにアレが実現しましたね。きっと最初は何気なく言った言葉なのでしょうが、岡田監督の魅力的な人柄も相まって、「アレ」が微笑ましい言葉に感じます。
 
先日クリニックへ初めていらしたパーキンソン病患者さん。まだ比較的お若い彼女は、約7年前に左手のつかいにくさを感じるようになり、他院でパーキンソン病の診断を受けました。それから現在まで薬剤治療を続けていますが、遠方に住んでいるため、3か月ごとに札幌へ来院されていました。
 
診察室で拝見しますと、一見パーキンソン病とはわからないくらい、すっと伸びた背筋と穏やかな表情が印象的です。安静時の振戦はありませんが、手を伸ばしたときにわずかな振戦があります。左側の手足を中心に筋肉のこわばりがあり、歩いたときに左腕をあまり振ることができないようです。歩いたときに右肘はストンと伸びきっていますが、左肘はこわばりの影響でわずかに曲がってしまいます。歩行のスピードはしっかり保つことができています。パーキンソン病の重症度分類、ホーエン・ヤール分類では2度に相当する状態です。
 
彼女の治療薬を拝見しますと、レボドパと補助薬(COMT阻害薬;オピカポン)を内服されています。オピカポンは高額な薬剤のため、3か月ごとに、毎回30,000円近くの自己負担(3割負担)となっています。年間で約12万円の支払いは…本当に高額です。
 
パーキンソン病の指定難病医療費助成制度、いわゆる難病手帳をお持ちであれば、自己負担が2割に下がり、医療費自己負担に上限がつくようになりますので、経済的にはこのような高価な薬剤を使用しやすくなるメリットがあります。ただ、指定難病医療費助成制度はパーキンソン病のヤール分類3度以上ではじめて指定難病に認定する、というように、重症度で厳密に規定されています。
 
それでは、この重症度に該当しないような、早期や軽症の患者さんは医療費を通常に負担し続けなければならないのでしょうか?そのような方へ指定難病医療費受給制度の「軽症高額該当」という特例があります。
 
この「軽症高額相当」とは、特定医療費の支給認定の要件である重症度分類等を満たさないものの、月ごとの医療費総額が33,330円(3割負担の方ですと自己負担10,000円)を超える月が年間3月以上ある患者さんについては、支給認定としますよ、というものです。彼女のように、10,000円以上の自己負担がある患者さんでは、ホーエン・ヤール1-2度といった軽症のパーキソン病患者さんでも、「軽症高額相当」として指定難病医療費助成制度を申請することができます。これによって、窓口での自己負担が2割に下がり、また1月の医療費自己負担に上限がつくようになりますので、経済的にもながく治療を続けやすくなります。彼女もこの「軽症高額相当」で、指定難病医療費助成制度を申請することにしました。
 
難病手帳をお持ちでなくても、パーキンソン病で治療を受けていて、1か月にかかる病院と薬局の支払い金額合計が、10,000円(3割負担の場合)を超えていないでしょうか。それが年に3回ある場合には軽症高額相当での難病手帳申請が可能です。今一度、領収書を確認してみることをお勧めしています。
 
クリニックに通院している患者さんが高額な薬剤を使用する場合には、予めスタッフから軽症高額相当の案内をしたうえで、薬剤を導入するようにしています。
 


~イルカ岩から槍ヶ岳を望む
 

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩