パーキンソン病2024.02.25
今週の札幌はドカ雪に見舞われて、すっかり季節が戻ってしまいました。先週の記録的な暖かさに春が近いかも?なんて淡い期待をしていましたが…あの暖かさはどうやら幻だったようです(苦笑)。
当院の訪問リハビリテーションを受けておられるパーキンソン病患者さん。彼がパーキンソン病と分かってからだいぶ期間が経ち、現在も他院で薬剤治療を受けておられます。ながく一人暮らしを続けてきましたが、ここ数年はご家族が同居するようなかたちで懸命に介護にあたっておられます。自宅で当院の訪問リハビリテーションを受けるため、クリニックが関わらせていただきはや2年が経ちました。毎週訪問しているリハビリテーションスタッフからは、患者さんの様子はもちろんのこと、ご家族の様子も都度詳しく伺っています。
彼とご家族に初めてお会いしたのが2年ほど前です。当時は一日のなかでも身体の動きに波が目立ち、調子のよい時間・よくない時間が、日によってまちまちに出てしまっていました。パーキンソン病治療薬の効果がなかなか安定せず、ジスキネジアと呼ばれる不随意運動や幻覚のために、気分的にも辛い・落ち着かない時間が続きました。そして、懸命に介護するご家族の疲労も溜まってしまう一方でした。それでも、なんとか自宅での生活を続けたいとの思いで、訪問リハビリテーションなどのサービスを導入しながら、一日一日を一生懸命過ごしてこられました。
いよいよ自宅での生活も難しいかもしれない…と、昨年の夏に彼とご家族から相談を受けました。すがるような思いで入院してリハビリテーションを行い、2ヶ月ほどで自宅退院されたときのことです。
先日訪問診療で自宅を訪ねた際には、これまで見たことがないような、少しふっくらした、元気な顔で迎えてくれました。椅子からの立ち上がりや歩行も安定し、以前みられていたような不随意運動も落ち着いています。夜間に何度も目が覚めてしまい、その都度ご家族が介助されていましたが、今はぐっすり眠れるようになったとのこと。食欲も増して声に張りが戻っています。そして、ご家族の穏やかですっきりした表情も印象的です。
実は、パーキンソン病治療薬は入院前と変わっていないのです。入院での規則正しい生活やリハビリテーションの効果もさることながら、精神的に少し余裕が生まれたところが大きかったのではないかと感じています。それは彼自身もそうですし、ご家族にも精神的な余裕が生まれたところが大きかったのではないかと感じています。
「雪がとけて暖かくなったら何をしたいですか?」と尋ねたところ、ご家族が穏やかな表情で答えてくれました。「近くの店でパンを買っていって、ふたりで公園でのんびり食べたいね。」
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
Categoryカテゴリー
Archive月別アーカイブ