Dr Makoto’s BLOG

レボドパをしっかり小腸へ届けるために

パーキンソン病2024.05.26

 
診察室でパーキンソン病患者さんからいただく相談のひとつに「胃もたれ」があります。
食べものがスッと胃に落ちていかない、少し食べただけで胃がいっぱいになって食べられない…いずれも消化管のはたらきが下がってしまうための症状と考えられます。パーキンソン病患者さんの脳に蓄積するレビー小体というタンパク質、実は早いうちから腸の神経叢にも蓄積してしまうために、消化管のはたらきが下がってしまうと言われています。
 
食べ物を口にいれると、食道を通じて胃に到達し、消化がはじまっていきます。その後、小腸や大腸で水分の吸収や調整が行われ、直腸そして肛門へとたどり着きます。胃もたれや便秘というのは基本的にこの消化管の働きが下がってしまっている状態です。胃もたれしにくくするためには、胃で上手に消化され、小腸へスムーズに流れていく、「胃排出能」がしっかり保たれていることが望ましいのです。パーキンソン病患者さんでは、この胃排出能が下がってしまうことが多いようです。
 
ところで、パーキンソン病治療薬のレボドパ、内服すると消化管のどこで吸収されるかご存知でしょうか?レボドパが吸収されるのは胃ではなく、小腸で吸収されているのです。パーキンソン病患者さんで胃排出能が低下してしまうと、レボドパが小腸へスムーズにたどりつかなくなります…これではせっかくのレボドパも効果を発揮できなくなってしまいます。
とくにウェアリング・オフとよばれる治療薬に日内変動が出ているときには、胃腸の動きを整えていくことも大切な治療となります。
 
健康な胃腸のために、食道から肛門まで、消化管がしっかりと動くことが理想的です。胃排出能を高めるためには、柔らかい食材や刺激物の少ない食材など、消化されやすい食事を意識することが大切です。また、便秘に対して下剤で大腸の動きを促すことも、胃排出能を高めるのに大切です。さらには、食道から胃にかけてのはたらきを促す、消化管機能改善薬を上手に利用する方法もあります。
いろいろな方法で工夫しながら、胃腸の動きを促し、レボドパが小腸でスムーズに吸収されるように整えていきます。
 
 
~恵庭岳からの支笏湖ブルー

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩