パーキンソン病2024.06.30
札幌にもついに真夏日がやってきました。
夏本番を迎え、カラっとした北海道らしい夏を楽しみたいものです。
この春からクリニックへ通院されているパーキンソン病患者さん。
彼は、道外でパーキンソン病の薬剤治療を続けながら、仕事を定年まで立派に勤め上げ、この春から北海道で退職後の新生活が始まりました。クリニックに初めてこられたときの診察では、パーキンソン病のこわばり(固縮)や振戦はほとんどなく、受け答えや立ち上がりもスムーズです。ひとつ気になったのは、身体全体がクネクネと勝手に動いてしまうジスキネジアが出ていることです。レボドパを頻回に内服している影響と思いますが、一方で目だったレボドパ薬効の切れ(オフ)はないようです。レボドパのほかにも、ドパミンアゴニストや補助薬など、数種類のパーキンソン病治療薬を内服しており、やや薬の量が多い印象でした。
お話を伺うと、これまでたいそう多忙な仕事だったようで、体力的・精神的にも負担が大きかったとのこと。不眠がちとなってしまい、身体がしっかり動かないことには仕事に影響がでてしまうために、パーキンソン病治療薬はそれなりに多い量を必要としていたようです。
クリニックで初めてお会いする患者さんの薬剤を初回から変更することは少なく、彼やご家族とは、新生活の様子をしっかり見ながら調整していくこととしました。
そして、クリニックに通い始めて1か月ほど経過した定期診察のことです。気分がせわしなく落ち着かなくなってしまい、イライラしやすく、ちょっとしたことでも感情を抑えきれないようになったと、相談を受けました。定年退職後、ゆっくりと第二の人生をスタート、と思っていたご家族も、彼の優れなさに大変困っておられました。伺うと、定年後の新しい生活は、自由な時間も確保できるようになり、これまで勤めていたときと比べて、体力的・精神的な負担が格段に減っていました。
パーキンソン病治療で補充するドーパミン。このドーパミンは身体や精神的な活動・疲労によって消費され、減っていくと考えています。いざドーパミン治療薬で補充しても、仕事などの活動によってドーパミンが消費されていくと、数時間で薬効の切れ(オフ)が出てしまいます。そのため、どうしてもドーパミンを治療薬で次々と補充していかないといけなくなってしまいます。
大切なことは、パーキンソン病患者さんに必要なドーパミン治療薬の量は、決まった量(絶対量)がある訳ではなく、身体や精神的な活動・疲労の程度によって異なるため、バランスをみながら相対的に調整していく必要があるのです。
彼の場合、退職してからの新生活で身体や精神的な活動・疲労が減ったために、もともとのドーパミン治療薬の量が、新生活では相対的に多過ぎるようになったのです。ドーパミン治療薬が多過ぎると、身体全体がクネクネと勝手に動いてしまうジスキネジアや、落ち着きがない・イライラ・感情を抑えきれないといった気分が高揚し過ぎた状態になることがあります。
彼はもちろんのこと、ご家族も優れなさに大変困っておられましたが、これは新しい生活ではドーパミン治療薬が相対的に多い影響とお伝えし、慎重に治療薬を減量していくことにしました。それから毎週通院していただき、治療薬を減量していくことで、だいぶ彼本来の穏やかな様子が戻ってきています。ジスキネジアもなくなり、薬効の切れ(オフ)もなく、今のドーパミン補充量が、新生活にだいぶ合ってきたようです。彼とご家族のホッとした表情が印象的です。
~十勝岳からみる美瑛岳と大雪山系
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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