Dr Makoto’s BLOG

パーキンソン病へのレボドパ持続皮下注療法

パーキンソン病2024.09.02

*北海道新聞2024年6月12日 掲載記事より
 
「パーキンソン病に皮下注療法 手術、胃ろうよりリスク少なく」
 
運動機能に障害が出るパーキンソン病で、新たな治療が昨年5月に保険適用された。飲み薬の効果が弱くなった人が対象で、従来の外科手術や胃ろうによる薬剤注入治療と比べ、リスクが少なく、取り扱いが大幅に容易になった。高齢化に伴い、世界的に患者は急増。厚生労働省によると、国内には約29万人の患者がおり、特定疾患では最も多くなっている。65歳以上では100人に1人が発症するといい、「パーキンソンパンデミック」との指摘も出ている。

パーキンソン病は、大脳の下部にある中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することで発症する。手足のふるえ、動作緩慢、筋肉の固縮、姿勢反射障害(転倒しやすい)が主症状だ。50歳以上で起こることが多いが、30代で発症することもある。原因は不明だが、40歳以下の若年性の場合は遺伝が関係していることがある。欧米では男性、日本では女性に多い。

日本神経学会の指導医・専門医で、患者の7割がパーキンソン病の「医療法人北祐会 札幌パーキンソンMS神経内科クリニック」(札幌市北区)の廣谷真院長によると、治療の基本は服薬だ。薬は主に3種類あり、ドパミンを補充する役割がある「レボドバ」、ドパミンの分泌を促進する「ドパミンアゴニスト」、「補助薬、非ドパミン系治療薬」がある。

このうちレボドバは最も強力な治療薬で、初期の段階では症状が大幅に軽減する。この状態は数年間続くが、服薬期間が長くなってくると、服薬後2~3時間で薬効が減弱する日内変動や、体が勝手に動いてしまうジスキネジア(不随意運動)を伴うことがある。 
その副作用を克服するために開発されたのがドパミンアゴニストだ。作用時間が長く、日内変動やジスキネジアを起こすことも少ない。半面、薬が効くのに時間がかり、幻覚や眠気などの副作用が出ることがある。
廣谷院長は「それぞれの薬にメリット、デメリットがある。さまざまな薬の組み合わせで症状を抑えるが、近年は薬の種類も増え、治療の幅は広がっている」と指摘する。

病状が進行し、日内変動や不随意運動を薬でカバーできなくなると、「脳深部刺激療法(DBS)」や、「レボドバ・カルビトパ配合経腸溶液療法(LCIG)」などを検討する。

DBSは外科手術で脳深部に電極を埋め込み、前胸部に植え込んだ刺激装置で、脳を刺激し、症状をコントロールするもので、2000年に保険適用された。刺激部位や強度の調整が必要であるが、日常生活では手入れの負担が少ない。
LCIGは、胃ろうをつくり、チューブで腸から薬剤を持続的に投入するもので、2016年に保険適用となった。血中濃度の変化が減り、日内変動やジスキネジアが軽減する半面、チューブが詰まらないよう毎日手入れする必要がある。
これに対し新たに保険適用となった「持続皮下注療法は、2センチほどの小さな針が付いたパッチを腹に貼り、持続的に薬剤を体内に注入する。LCIGが最長16時間の投与が可能であるのに対し、持続皮下注療法は24時間の投与が可能である。

廣谷院長は「患者にとり体に優しい治療。幻覚など副作用への懸念もあり、現段階で使っている人は各医療機関とも限られているが、実績が積まれていくと今後使う人が増えるのではないか」とし、「パーキンソン病は早期に薬剤治療とリハビリテーションを始めれば、手術などを避けられる」と話す。


~大雪山・五色岳からみる忠別岳と旭岳

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩