Dr Makoto’s BLOG

人生会議のこと

神経内科2024.09.30

クリニックでおもに診療させていただいているパーキンソン病や脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症などの患者さん。ながく付き合っていかなければならない病気ではありますが、最近改めて感じることが、患者さんにとって様々な選択が続いていくということです。
 
たとえば、診断を受けて間もないときは、家族へどのように伝えていくか、仕事とどのように向き合っていくか、治療をどのように進めたいか…初めのうちから様々な選択が出てきます。少し時間が経っていくと、生活スタイルにあわせて薬の内服時間をどうしていくか、姿勢を保ったり、ムセ(誤嚥)を予防するためにどのようなリハビリテーションを取り入れていくか、安全に生活するために自宅の環境をどのように調整していくか、やはり選択することが続いていきます。さらには、十分な食事をとるのが難しくなったとき、通院が難しくなったときに、医療機関や医療処置をどうしていくかといった選択も出てきます。病気の段階によって選択する内容は変わっていくのですが、患者さんやご家族にとってはすべてが初めてのこと、いつに、何を選択したらよいのか分からないのは自然なことです。
 
最近ではアドバンス・ケア・プランニング(ACP)といって、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 患者さんを主体に、ご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みが勧められています。いわゆる人生会議とも呼ばれるもので、行きつくところは、どのように生きていきたいかという患者さんの希望で、これには選択がつきものです。そうは言っても、実際に患者さんと接していると、家族関係の事情、経済的な事情、仕事の事情…色んな事情でなかなか選べない姿も拝見します。それでも病気が進んでしまうと、時間が限られてしまい、待ったなしで選択しなければならない姿も拝見します。
 
体調がこれからどう変わっていくのか。診断から間もないときは5年・10年先の将来で伝えていきますが、時間が経っていくと、もう少し近い将来のこと、具体的には3か月から1年くらい先の予測を伝えるようにしています。たとえば、転倒や誤嚥といった合併症のリスクがどれくらい高まっていくのか、いつ頃まで食事・栄養をまかなうことができるのか、いつ頃まで身の回りの動作をこなすことができるのかといったことです。
 
そのうえで、家族と過ごす時間を優先したい、できるだけ合併症を起こさないように医療処置を導入したい、在宅サービスをめいいっぱい利用して自宅で暮らしていきたい、施設へ入所して生活を続けたい、自然のなりゆきに任せる…。どれも今すぐに選ぶのは難しいことです、3か月から1年かけて選んでいくことで、少しでも納得が高まるようにサポートできればと、普段から意識しているところです。
 

~大雪山・五色ヶ原からみる石狩岳

廣谷 真

廣谷 真Makoto Hirotani

札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長

【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。

【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩