パーキンソン病2024.12.21
クリニックでも、「よいお年を」という挨拶がよく聞かれる季節になりました。診察室では「今年もよく頑張ってリハビリテーションに通いましたね」「今年は体調がよく安定していましたね」、今年を振り返る会話が増えています。
「自宅で普段どんな運動をしたらよいでしょうか?」パーキンソン病患者さんからよくいただく質問です。筋肉のこわばりを軽減するストレッチ的な運動が基本ではありますが、患者さんによってこわばりの目立つ部位は様々です。肩甲骨まわり・前腕・腰まわり・足首…どの部位を念入りにストレッチしたほうがよいのか、診察室では患者さんごとに優先順位を伝えるようにしています。
そうは言っても、ストレッチだけではなかなか対応が難しい症状が沢山ありあます。筋肉のこわばりに伴って出てくる多くの症状…関節の可動域が狭まったり、バランスをとりにくくなったり、歩幅が小さくなったり、方向転換がぎこちなくなったり…。どれも対策が必要なものですが、ここまでくると身体のつかい方のトレーニングになってくるので、リハビリテーションを是非はやいうちから勧めるようにしています。
クリニックのリハビリテーションは理学療法、作業療法、言語療法を実施しています。歩行やバランス訓練などは理学療法が中心、日常生活動作に直結する上肢の細かな作業は作業用法が中心、発話や嚥下は言語療法が中心となってリハビリテーションを行っていきます。
このリハビリテーションで難しいところは、一見してわかりにくい症状、つまり注意力や遂行能力、不安や緊張のしやすさなどによって、リハビリテーションの効率やアプローチが変わっていくというところです。たとえば、「5メートルを10歩で歩いてください」という課題だと上手くできても、「腕を振って、かかとから地面に接地して、5メートルを10歩で歩いてください」と注文すると、途端に難しくなっていきます。このように同時に注意しなければいけないポイントが増える「マルチタスク」の状態になると、注意機能が狭くなってしまっているパーキンソン病患者さんでは急に難しい注文になっていきます。「さらに、掛け算の九九を声にだしながら歩いてください」なんて課題を加えると、注意するところがどんどん増えていき、難しさが倍増していくのです。
診察室では毎回患者さんに歩いていただき、歩行の様子を拝見するようにしています。患者さんからは、「診察室だとリラックスして上手く歩けるんです」という声をよく聞きます。よく聞きますと、屋外の人混みだったり、自宅のトイレなど狭いところだと、途端に上手く歩けなくなるとおっしゃるのです。これは、注意機能が十分に働いていないと、環境や場面によって、こわばりはもちろんのこと、関節の可動域やバランス機能、歩幅や方向転換が影響を受けてしまうことが関係していると考えています。
リハビリテーションでは、基本となるこわばりを軽減する単純なストレッチから、注意機能を活性化させるマルチタスクの複雑な運動まで、患者さんの症状や段階にあわせたオーダーメイドで治療をすすめています。「リハビリテーションを始めるのに早すぎることはない。」是非とも多くの患者さんに、早期からのリハビリテーションに取り組んでいただきたいと思っています。他院通院中の方でも当院でのリハビリテーションを受け入れておりますので、是非お気軽にご相談ください。
~幌尻岳からみた戸蔦別岳と七つ沼カール
廣谷 真Makoto Hirotani
札幌パーキンソンMS
神経内科クリニック 院長
【専門分野】神経内科全般とくに多発性硬化症などの免疫性神経疾患、末梢神経疾患
眼瞼けいれん・顔面けいれん・四肢の痙縮に対するボトックス注射も行います。
【趣味・特技】オーケストラ演奏、ジョギング、スポーツ観戦、犬の散歩
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